SZNK 10月












石原とつき





健啖家がひとりのこらず宙に舞う







鮫より覚悟している女子高生のあざやか







落ちる無音のある無音のない水の薄荷のころ







アマリリスはうじゃうじゃする夜はそんなところだ




けいえむ(暗渠)





リハーサル秋風に乗るヒット曲







コウモリも開演を待つ日比谷野音







歓声照明演奏手拍子拍手







コンサートはねて静まる噴水




小早川すすむ





渋谷のネオン爪に塗ってきみが登場







北向きの部屋あずきバーだけが光







髪はねて草書







忘れたいタイミングで風吹きました




大川崇譜





ペンの塔とがり空は痛いだろう







サンチュええそんなズッキーニ







墓むかう似合わない花を買ってやろ







雨はブロックノイズ犯人の見つからない




木野清瀬





くち紅で水引草の点点点…







磨り硝子に苔光る人夫の冬シャツ売る店の







琉金まるまる生温き秋







実銀杏破れて忘れぬ恋人よ




平安まだら





ユーザーとして起きてユーザーのまま寝る







裸眼のチーフに囲まれる夢の続き







雨はたましいのとぎ汁じゃなかった







素敵の半分は敵




来栖啓斗





少女趣味だが煙草が要る







乾いた傘が当たっている







ぶつかってしまった人の体温







なんにもない空の滅んだ後のこと




蔭一郎





遮断機が上がるたびに糸偏が通る







「ただいま」「おかえり」水銀が降る







鈴木の顔が滲む鶴が来る







海を摘んでいた天気だ




石川聡





アンダン手でつないでアルデン手







柿が柿の色ノラ猫を名で呼ぶ







ゴスペル合唱 突き抜ける彼岸花







ざくろもあくびのひよりだ




岩渕幸弘





眼鏡買ったこれから右手を買いにゆく







ウインクで月撃ち落とす唐傘の夢







虹の交差点にてマシュマロ焼いてまふ







名も無き果実、さよならボート




おのぎのあ





頬ずりの仕事のたのしい







愛情はありませんがドライヤー







憎しみを伴わず流血







月曜日のオノマトペを舐める




さいとうこう





レモン色の晴れた朝の花







若い巡査の傷のついた腕時計







コスモス畑の一本のひとりの重さ







夜空の真ん中の窓があいている






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サザンカネット句会のメンバー内ブログです。 DMはTwitterの@genuinegohanteiまで。

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