SNNK　10月

平林吉明

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悲しみに溺れる夏の服を脱ぐ

つみ重ね重ねつつ身にブルーシート

こころのこごえ秋の原っぱ

田中耕司

妹思いのなんでくん雨の中でシャボン玉遊び

シジミチョウが三人なんてなんでくん厄介だ

夏休みカマキリ飼ってるなんでくんおもろい一年生

小学生にあいさつされてドギマギ子供の日

草の耳彦

鳩がなく時によっては王子様

今ここに居るのは誰か仕事中

ため息も欠かさず注目しているおまわりさん

丘越えて神との取り引き毛糸の茂み

石川聡

イタタマレナイをひろって口に入れる

葉脈に火がつけば全山へ秋

うつつからときどき不通まんじゅしゃげ

午後の死を閉じ込めている青い蜜柑

大川崇譜

求めず働けば数行のプログラム

何万ページ上梓された赤いノンフィクション

ちにてんてんかしにてんてんかラジオながれ

茶碗あふれる舞茸の教養

叶裕

欠勤のベンチで呷るバカの酒

明方のファクトチェックが人を消す

ロザリオを噛めば発熱する身体

緊縛教室初回三割引の午後

ちんぴら

歪な五角形に惹かれかれこれ

法事から帰った居間の黒魚

名月でバランみたいな草叢の上

赤レンガ行き交う風邪薬の服