草の耳彦
① 窯変失敗割った破片の皿曼荼羅
② 柚子吊るす浮く鶴つづく踏むゆるく
③ ついに弾けたあわただしい
④ 絵消せってね照れて男こそ世の泥を
榎本祥子
⑤ 天狗の咆哮駆け抜け冬銀河
⑥ 寒緋桜にさようなら美しさ刹那よ
⓻ 冴ゆる夜揺れるポニーテール下弦の月
⑧ 人生の底47.2歳を受け入れる潔さをこの手に
石原とつき
⑨ 鉛なシマウマな変化や太陰暦や盗む
⑩ ナフタリン沿い「ピストルは?」口内炎の幼い
⑪ ひれか黙読か麦のパラレルは密度
⑫ 来客簿に氷砂糖にそっくりそのまま急ぐ
大川崇譜
⑬ 保温式のブックカバーありてだきしめる
⑭ 売り売られ池袋のそもそも
⑮ ホールディングス都合によるバターの香り
⑯ 春を叩けどクレームブリュレあかなくて
石川聡
⑰ 過失器付きヒーター炎上す
⑱ よろよろ立ちあがる春の陽の角度
⑲ ベッドカバー今朝も白い画布にする
⑳ ほおづえのひじの内角からりっしゅん
木野清瀬
㉑ マスカラ上手くなる睫毛に浅き春
㉒ オーディブルに気づくわたしの単細胞
㉓ 黒いコートの脱いで重さに驚く
㉔ 清瀬駅にその先聴きたいセカンドラブ
叶裕
㉕ 春氷踏んでルブタンは赤い底
㉖ タワマンは墓標だろう
㉗ 誰かが泣いてるんださざなみ起こるたび
㉘ ラブホ街紅梅もう少しだな
田中耕司
㉙ 出遅れたロウバイの小さな莟が黄色
㉚ ほんの少しだけ花つけたミモザアカシアのはじまり
㉛ 如月の花だろボケのやろうとぼけてるな
㉜ 石焼き芋の売り声に返事してるのか水仙黄水仙
来栖啓斗
㉝ 冬の木をどんどん通り過ぎて目的地へ行く
㉞ 冬の雨が降る場所で地面が少しずつ濡れる
㉟ 冬の街中で目が合ったが多分もう会わない
㊱ 住んでいる町の家を眺めながら歩く冬の夜
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