平林吉明
① 空はジャマイカ人妻と森へゆく
② コブシ狂い咲く興行師の束の間
③ はるひのベンチに棄てられて人影
④ 空は水の底名曲喫茶のテロリスト
篠原紀子
⑤ 笑えばあなたに近くなる
⑥ 背中のホックの周期ずれている
⑦ 雲呑のたね捏ねる手ぬるむ
⑧ 菜の花を左に見る停止線
暗渠
⑨ 強い電流おさまらぬ揺れ
⑩ 街喰う波
⑪ 首都圏に汚れた雨が降る噂
⑫ 地図上で原発からの距離測る
草の耳彦
⑬ 思い尽き加速度つけて大地にキス
⑭ 風吹いて街が頭上に降ってくる
⑮ 今日もまたアンナカレーニナで遅刻する
⑯ やめてれば列車来たはず定刻通り
石川聡
⑰ マスクない顔の二分咲き
⑱ 花いっき春が腕《かいな》かえした ※かいな は腕へのルビ
⑲ 沈丁花ぐずぐず終わり明日は燃えるゴミ
⑳ 春をたなびく に夕陽あわあわはなうた
野谷真治
㉑ 蝶々結び枝分かれの春
㉒ 豆腐屋さん膨らむ黄昏
㉓ 胡座咳痰眩暈日々薄明
㉔ 道化師と語り合う風船の作り方
叶裕
㉕ AIに聞くや明日の屁のゆくえ
㉖ だまれば、すさむ
㉗ ひたぶるにマジックハンドがかゆいんだ
㉘ 発禁本鰓もフリルも付いてくる
大川崇譜
㉙ 町は満塁 色がよみがえる
㉚ 80パーしあわせと思えるチッソな春だ
㉛ さくらは盗むかすり傷のお話
㉜ アスパラガスのペン先は今月号のわたし
柴原弘昌
㉝ ネーブルの尻 要件を忘れしむ
㉞ バスに乗り遅れたカントに話かけられない
㉟ ビル風は物理、コンビニおでん買う
㊱ 百人一首《ひとくび》 生々しく別々 ※ひとくびは「一首」へのルビ
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