石川聡
① うとうとは水のなかの音のでんしゃ
② 一気に空は白鳥へ発つ
③ こぼし続ける腕時計
④ ぼとぼと訳しだす椿
田中耕司
⑤ お絵描きのお花もお転婆だ二人
⑥ 浅草快晴大股のニッカが行く
⑦ 良き土も水も田も澄み餅つきよ
⑧ 見目うるわし盆栽散歩し春花見
草の耳彦
⑨ 訃報で存命だったことを知る
⑩ 思い浮かばれない景色に見つめられている
⑪ 知らないひとたちに眺められる平らな物体
⑫ 足元のアブストラクトにすくわれる
平林吉明
⑬ 目薬ひかる底辺×高さ÷2
⑭ 春を売るシクラメンひざまずき
⑮ 誰も読まない句集今日発売日
⑯ 幾何学的枯れ枝くらい蒼穹〈あおぞら〉
※〈〉はルビ
叶裕
⑰ 租界地のサメに聞き出す奇人譚
⑱ 遺棄されし暗渠に咀嚼音のある
⑲ 人倫の化外に定型詩のぬめり
⑳ 赤線の線が見たいか鳩の街
大川崇譜
㉑ 靴を買わなきゃ正しい場所に止まるくつ
㉒ その車窓はわたしを裏切る雪が降る
㉓ いらといらでもいらっしゃい
㉔ 仁義礼智思いやりは光る玉に (悼 辻村ジュサブロー)
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