サザンカネット句会 四月

①

愚か者は付番されずに果ての世界へ

②

力得て悪魔で強きで逝くつもり

③

お日様とかごめかごめの運命の輪

④

皇帝に正義を

⑤

カタバミのやわらかな黄色に騙されている

⑥

地震花散らしの雨手巻きの腕時計四月バカ

⑦

検察庁のたんぽぽおそらく不起訴だろう

⑧

どこにも出張ってくるヒナゲシのような奴さ

⑨

しとやかなランチ握りの光るネタ

⑩

高座から落とす扇子にオチは無し

⑪

〆の電気ブランはオールドで

⑫

春雨に濡れて銀座の街を往く

⑬

みずからの二度目の未遂水ぬるむ

⑭

花筏人人人の柩を流す

⑮

ハナミズキには言えなかった別れ

⑯

戦地の話くり返す花韮かおり

⑰

鏡があっても仕方がない

⑱

誰もいないと思えば子供

⑲

咲いてから桜だと見る

⑳

鳩こちらが驚く

㉑

インコの籠に差す初夏だクーポン

㉒

後悔ひとつくださいわかめそば

㉓

ぽっかりぽっかりうらおもて雲はバターで焼く

㉔

善人ＡとＡＢの舐めるアイススプーン

㉕

折り殺すものなくただ爪を噛んでゐる

㉖

さくら　ひとり　黒目が滲み出す

㉗

古句すでに前衛の顔してをりぬ

㉘

あばら　腹だけ出てゐる

㉙

カステラざらめジュラ紀のジャリの音

㉚

生しらす黒目てんでん春のベクトル

㉛

教室で僕は蝮蛇草と知った

㉜

まどろみを訳せば春の陽と風

㉝

うつむく会社員さくらトッピング

㉞

出社して四角いな景色

㉟

つぎつぎ身を投げる満開の堀

㊱

すれ違う夜行バスに心だけ乗せる

㊲

買い替えた空はずうっと青いまま

㊳

真ん中に川が置かれたままである

㊴

神さまが聞き耳たてるやかなけり

㊵

象の遺書めぐってまずはカーチェイス