SZNK 一月












草の耳彦





ウラオモテまるであわないパズル旅行者







目いっぱい閉じた隙間の三面鏡







長持の中で目覚めた夢を江戸川の







月に塔、三つ目の獏の夢くらい




磨秘頭





鴨が飛び去る冬の空冷え







昼寝覚めて雪が変わっていた







桜の木葉は散り去り枝振り







夜が明け鴉も出勤してきた




来栖啓斗





あまりにもだらしなすぎて失ったものに気づかず水を見ていた







ある石は沈みたくない意思よりも沈もうとする意思が大きい







人は死ぬとしてようやく落ち着いた布団にいればよく眠れるし







かけがえのない毎日を繰り返す夢から覚めるまで繰り返す




石川聡





雪ふる音の青   へ    吾を







遠い火事わが背に映えドップラー







寒風は天のプネウマ耳千切る







街灯ノイズ    耳が眩しいジャニス・ジョプリン




暗渠





愛弟子を怒鳴り散らした老主宰







百人が一気に作句鬨の声







票数が「正」の字になる逆置換







八回戦戦い抜いて大団円




大川崇譜





凶はでただけのこと   結ぶ冬枝







ガラスの靴ものびる冬







空いっぱい温度しかないきょうのおひる代







海苔と鰹節降る回帰する







叶裕





冬陽差す標本瓶の中は黙(もだ)







神田川右親指が群れている







肋骨のひび谷折りにしてあくび







鎖骨湖に月







木野清瀬





あらいやだ口癖の似る聲似せる







坂の下の塩バターらーめん







交叉せぬ縄編み愛なき世界







ちいさな飯碗に二杯ください







 





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サザンカネット句会のメンバー内ブログです。 DMはTwitterの@genuinegohanteiまで。

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