草の耳彦
①
ウラオモテまるであわないパズル旅行者
②
目いっぱい閉じた隙間の三面鏡
③
長持の中で目覚めた夢を江戸川の
④
月に塔、三つ目の獏の夢くらい
磨秘頭
⑤
鴨が飛び去る冬の空冷え
⑥
昼寝覚めて雪が変わっていた
⑦
桜の木葉は散り去り枝振り
⑧
夜が明け鴉も出勤してきた
来栖啓斗
⑨
あまりにもだらしなすぎて失ったものに気づかず水を見ていた
⑩
ある石は沈みたくない意思よりも沈もうとする意思が大きい
⑪
人は死ぬとしてようやく落ち着いた布団にいればよく眠れるし
⑫
かけがえのない毎日を繰り返す夢から覚めるまで繰り返す
石川聡
⑬
雪ふる音の青 へ 吾を
⑭
遠い火事わが背に映えドップラー
⑮
寒風は天のプネウマ耳千切る
⑯
街灯ノイズ 耳が眩しいジャニス・ジョプリン
暗渠
⑰
愛弟子を怒鳴り散らした老主宰
⑱
百人が一気に作句鬨の声
⑲
票数が「正」の字になる逆置換
⑳
八回戦戦い抜いて大団円
大川崇譜
㉑
凶はでただけのこと 結ぶ冬枝
㉒
ガラスの靴ものびる冬
㉓
空いっぱい温度しかないきょうのおひる代
㉔
海苔と鰹節降る回帰する
叶裕
㉕
冬陽差す標本瓶の中は黙(もだ)
㉖
神田川右親指が群れている
㉗
肋骨のひび谷折りにしてあくび
㉘
鎖骨湖に月
木野清瀬
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