木野清瀬
①
どんなときも林檎はうさぎ
②
背広からキャラメル剥いた紙戻す
③
なんてことないわ、壁にベティ・デイヴィス
④
湯舟に沈む紅葉
平安まだら
⑤
俺か俺以外と言う人の俺以外に俺
⑥
ブザー鳴る改札 検品エラーの俺として
⑦
組体操死なずに済んだ俺たちの後夜祭
⑧
冷凍の米をチンするような俺のキス
※間は一文字ぶんにしました
けいえむ
⑨
新宿地下道しっかりにぎる手
⑩
ぶつかる肘に意地はない
⑪
つらなる街灯カシオペア
⑫
夜風かさかさ落ち葉鳴く
ちんぴら
⑬
鳶ぐるり見上げ空に墜ちる
⑭
街の隘路で諦念撫でる
⑮
許されぬまま福寿草喰む
⑯
月など知らぬ暗夜の坂道を俯く
来栖啓斗
⑰
水洗の勢いすら羨ましい
⑱
布団から出て旅に出る夢だった
⑲
いつまで踊っているのか夢の跡
⑳
どうも暗闇と親しい
石川聡
㉑
釜山港李さん半島忌むpossible
㉒
国道まっ直ぐ曲がる臨終へ
㉓
才能も美貌も置いて 石
㉔
氷雨に傷心ちり敷いたキンモクセイ
※間は一文字ぶんにしました
大川崇譜
㉕
モンブランは広い土地
㉖
駅超えて鉄路こえてデジタルリマスター
㉗
筆柿そらに平熱を塗る
㉘
正しいひとのくちびる魔法瓶は啼く
さいとうこう
㉙
義母の君づけがどこか嬉しい行楽の秋
㉚
いわし雲晩のおかずを決めかねる
㉛
ひとつのカンヴァスとみる赤い鯉が跳ねた
㉜
同窓といえばそれまで僕ら二杯の鴨南蛮
ハル
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