響子
①
花ざかり五月の季語で咲かないやつ
②
猫の恋狸と狐の化かしあい馬鹿試合ばか慈愛
③
ナポリタンに完璧はない
④
春の夜のローヤル句会の後のとまり木で
岩渕幸弘
⑤
のんきなパンツ夏風とかけ落ちか
⑥
点滴いってき涙いってき指も動かず
⑦
富士つまむ我はガリバー窓絵画
⑧
ベーコンの悩みに玉子添えてやる
カズマ
⑨
君のクロールから漏れる虹色の油
⑩
ビート板あるだけ重ねよう誰もいない星
⑪
ぱらぱら銀紙こぼしたての星座
⑫
走馬灯フリーズ中の一服
小笠原玉虫
⑬
ひなげし抜けば鼻先に雨
⑭
茉莉花透かして十六夜が泳ぐ
⑮
あのひとは死に揚羽はよぎり
⑯
ふと抜け出して燕をみつけ
大迫秀雪
⑰
からりあめあがりキミとペンキぬる
⑱
皐月おだやかチチコグサ ハハコグサ
⑲
キツネアザミ 初夏日いつもの冷やしきつね
⑳
珍しく気が合って照れ臭い
石原とつき
㉑
ジャングルジムと十回言わせるおとな
㉒
いそぎんちゃく魔法いっぱい
㉓
女人禁制の電話ボックスのひとり
㉔
スイスに行ったような顔の鳥
けいえむ
㉕
行き場のないぼくが旅立つ新宿
㉖
中野でも乗る人なくてふきこむ雨
㉗
雨粒ぱしぱし国分寺
㉘
店員ばかりの書店に売れ残る雑誌
大川崇譜
㉙
木々萌える消火器の期限が切れていく
㉚
隠れるしたたる真っ赤ルージュ
㉛
朝雨軽薄なじぶんを選ぶんだ
㉜
新玉ねぎ植木算にはるのいちいち
さいとうこう
㉝
ボリュームを上げればつつじこの街のつつじ
㉞
指をつつくサボテンに水をやる玄関
㉟
夕に染まりあなたと分かってしまうワンピース
㊱
なにを買ってもらったリュックサックそんな揺れ方
来栖啓斗
㊲
ガラス越しなら手を合わせよう
㊳
日光よりも月光なんということだ
㊴
電気を消したのに明るすぎる
㊵
誰もいない公園で鬼ごっこしている
石川聡
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