草の耳彦
① 思い断って電信柱とすれ違う
② 引き出しにはち切れんばかりのヤマト糊
③ 鼻先に迫ってくるのは天井か
④ 余計なことが不足している
田中耕司
⑤ 今年こそいい年だと言ってる青空だおついたち
⑥ 正月二日どうしても朝湯に行く下町育ち
⑦ 子供の姿も声もがらんど小学校
⑧ 雪ッ雪合戦新雪がキュッキュッ
石川聡
⑨ ルゴール 夜が煮こごる
⑩ 冬晴れの梢モーツァルト1節
⑪ 貴種流離譚うたいだす福寿草
⑫ という関係とけはじめるちくわぶ
叶裕
⑬ ぬくい腑を分け心のありか
⑭ 雨兆す油膜の川しわしわ
⑮ 船さかのぼるとき父憎し
⑯ 指名手配写真が見ている人身事故の文字
大川崇譜
⑰ あなた乾かすばかりふゆのポロネーズ
⑱ 東にしみこむ張りこみ用の電信柱
⑲ 延命するタオル固い冬
⑳ あまねくタイマー冬装備
平林吉明
㉑ 行き着く果ての風の不道徳
㉒ 西日ばかり果物屋まだ生きています
㉓ 冬ひかるさざ波に白鷺たつ
㉔ ことば葬る石油ストーブ
来栖啓斗
㉕ 塵が捨てられてから怖くなった
㉖ 校庭を思い出すことはなかった
㉗ 物語が読めなくて現実であった
㉘ 息をしていても生きているのか
小早川すすむ
㉙ 役終えたモミの木に垂れ下がる首飾
㉚ ゆっくりと持ち上げるミカンみてみて初日の出
㉛ 窓辺のみかん頑として正月終わらせない
㉜ 旧年も新年もひとつのゴミ袋
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