佐川智英実
① どっちつかずに揺れるパーカーの紐
② 今朝のよろしさ焙じ茶の湯気
③ よい枝拾って指揮者になった
④ 引き出しの奥にあるジップに入れた恋心
草の耳彦
⑤ 給湯器が壊れたので銭湯通い
⑥ 深夜の銭湯は静か男湯は
⑦ 女湯からは賑やかな会話が聞こえてくる
⑧ 泡立てて洗う男たち湯船はあいている
石原とつき
⑨ 薔薇は波動は念写は猫か風
⑩ 「お気のどくさま」プラトンのうみゆりしかしたいらげる
⑪ なまずのお守りの重さ「快調ね」尾行
⑫ オペラなへその緒なカープの軟着陸な衛星
うたたね凛
⑬ 心の声聴いてイヤホンは沈黙
⑭ かぶりついたホットドックがクワガタで
⑮ 寝ようとしてかぼちゃ炊く
⑯ 裏あだ名の方で呼んでしまったゴジラ先輩
平林吉明
⑰ 今日も遅れる山手線内回りの人生
⑱ オオデマリ老いてゆく命の投票箱
⑲ マスク外して恥ずかしそうに囀る
⑳ 眠れない句集に香る青い葡萄
大川崇譜
㉑ 地下鉄が冷やすジーンズ流行っていないらしい
㉒ 二つ先どちらか横のタイルだけ踏むランドセル
㉓ ひさしぶりぃ物々交換の渡海の晩よ
㉔ 半蔵門縦書きビルとビル昼と夜
来栖啓斗
㉕ 決めていた返事をします春日傘
㉖ 繭よりも人はむなしいかもしれず
㉗ 生えているよりほかなくて毒茸
㉘ 日盛りに一生懸命にも生きよう
石川聡
㉙ すいかづらのにおいが風をはこぶ
㉚ この路地もう青いちじく子どもら鬼ごっこ
㉛ 玉ねぎがさらさらにするわだかまり
㉜ 木苺の赤を透って陽は風になる
柴原色正
㉝ 万緑よ私を展翅せよ好きなだけ
㉞ 草にすわると自分のお尻がわかる
㉟ 読んで読んでと3mm本の背がせり出した、と思フ
㊱ 薄幸は不幸より悲しい
若木はるか
㊲ はらり踊りながらひらく牡丹
㊳ 晴ればれ躑躅びっしり揃っている
㊴ カラスたち尾羽振って寄り添う木かげ
㊵ やわらかに月山の薄紅いろ深くなる
田中耕司
㊶ 青葉若葉いてふそのほかよりどりみどり
㊷ 雨樋に絡まれ泳げない鯉のぼり見る子供
㊸ 初鳴きから五月に入ったうぐいすもう小猫でもいいよ
㊹ ブロックベイ登るカタツムリこんなふうに生きようなんて
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