うたたね凛
① スッポンと飼い主 月へゆくバスを待ち
② 誉め殺しで切り抜けた珈琲うまし
③ はぐれ蟻と部屋にいる休日
④ 無口の心が騒がしい
暗渠
⑤ 立葵おもすぎる自責の念
⑥ 最後の一輪梔子
⑦ 金糸梅別れに似合わず
⑧ たぶん未来はアガパンサス
石原とつき
⑨ 確率的は兄妹は警告にきなこ
⑩ かちかち山の山な空白がてらオーケストラ
⑪ 本来をあじさいは火星のみね打ちの宿命
⑫ 九割の鮫の全身な梵字「無理しちゃって」
来栖啓斗
⑬ 梅雨入りや君が濡れたら君が困る
⑭ 咲いている理由の数のアマリリス
⑮ ねむり木の子どもの頃に読んだ本
⑯ 芋虫がとても怖くて踏んでしまった
叶裕
⑰ 変顔をして万緑
⑱ 五十八歳AB型枇杷ひとつ盗りました
⑲ ルブタンに踏まれて発芽するわたし
⑳ 猫に諭されている
石川聡
㉑ ポプラざわざわ雨うたがわず
㉒ 距離感だいじにしている夏の薊は
㉓ 電卓よ電卓この恋をたたくAC
㉔ さみしくてまぎれ込むまぐろ解体ショー
大川崇譜
㉕ あ、あんと飲みこむデニスクエイド
㉖ 抽選このあじさいのこの一片
㉗ 公孫樹の陰までこのコンクリに愛されたい
㉘ いいか降るよ空はなでつける髪
おのぎのあ
㉙ 手遅れの夜のほの甘い風
㉚ 献立に悩んでいるだけの走馬灯
㉛ 恋人の電源を切る
㉜ パドリングして待つ次の脳波
柴原色正
㉝ 句読点打ち方わからずそのまま夏
㉞ 一日寝ていても黒目は流れない
㉟ 放っておいたらあしたがきのうになった
㊱ 衣更えして夏らるる
小早川すすむ
㊲ 春が肺のかたちになるねあちこち
㊳ ひび割れたこころ鰻のタレひと塗り
㊴ 西日が球となり墓地みかん
㊵ 大皿に伸ばす夫婦箸のぶつけ合い
木野清瀬
㊶ アマガエルサトガエルコムラガエルサビカエル
㊷ だめな女でミドレンジャーが好き
㊸ 運命線トルコアイスはよく伸びる
㊹ あぢさゐの匿う為のそのかたち
田中耕司
㊺ シロツメクサのとこからホームレスほんとかなわねえ
㊻ ピンクのノーゼンカヅラなんてでたらめじゃないか
㊼ 今年の昼顔は色が濃い真夏日
㊽ もうすこしがんばれよクチナシもう錆色だ
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