叶裕
① なにせうぞくすんでひとり蜷の道
② クリスマスローズ一晩を泣き明かす
③ カルマン渦に倣ってみるか
④ コーナーキックばかみたいに左が曲がる
秋月祐一
⑤ 雉とてとてと歩いてる
⑥ 踏まれても轢かれてもたんぽぽ
⑦ いけんのんよと猫叱る
⑧ ほんとだ耳がすこし熱い
平林吉明
⑨ 夢ほころびはじめる辛夷の白い
⑩ 次のページも妻のひとりごと
⑪ 寝たきりの子の眼差しにさくら
⑫ あなたのしらないわたしのしたい
石原とつき
⑬ 小数点を水な捨てるこれぞエロチック
⑭ かえすがえす刺身こんにゃくは行間はほとぼり
⑮ 「てにをはの売り切れごめん」わらわのさらさら
⑯ ぬいぐるみ盆地な鍵穴まみれ「困ってよ」それはさておき
大川崇譜
⑰ 蛸の吸盤迎えるうすにごり
⑱ しおり伝い犯人逃がす旅の一冊
⑲ ハルチカシジャック・レモン怒ってる
⑳ 春は特急の羽やすめ
柴原色正
㉑ 無駄口の多い工事
㉒ 地下足袋履く天動説に傾く
㉓ 生コンは絶頂ミキサー車ブルって
㉔ 夾竹桃の深みどり緑化して嫌われる
石川聡
㉕ 正直が人刺した 霙
㉖ やすむ蝶の息のうごく眉
㉗ 沈丁廃れゆくは尾形亀之介
㉘ マグダラのマリアの説話ミルクマグ
うたたね凛
㉙ 掃除して繭にあやまる
㉚ 裏あだ名尽きてしまって無色
㉛ バス停の今川焼きに甘えている
㉜ 老夫婦スキップしていて私も
榎本祥子
㉝ 菜虫蝶となる日に生を受け
㉞ かいがらぼねへと降り注ぐ、祝福のハーモニー
㉟ 朝霧に透けるビリジアンを見る
㊱ 在りし日の君を追って、T字路
田中耕司
㊲ 四本五本並んだ赤の強い桃の花桃色
㊳ 辛夷の莟が光りはじめた弥生三月半ば
㊴ ちょっと引っ込み思案かな白のレンテンローズちゃん
㊵ 湯島天神ラオ屋がいる男坂女坂
篠原紀子
㊶ 春近い上唇のアーチ
㊷ 不機嫌をブーツに押し込む
㊸ 月傾いて左目の涙
㊹ 春寒カレーの指なめている
来栖啓斗
㊺ ビルのあいだの夜と同じ時間を過ごす
㊻ 水をこぼして笑ってもらえて良かった
㊼ 待っている人が近い席だ
㊽ 布団の中で思い出す雪
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