平林吉明
① 乗り過ごした地下鉄にこぼれる
② おろおろ生きてそろそろ帰ります
③ 牝馬の瞳 涸れた井戸水
④ だまって毒はくおもいからだ
石原とつき
⑤ うぬぼれるうなじに音符描かせえ
⑥ 腐れば薔薇よ、大字ロールシャッハ
⑦ おおおかみに蛇口は付いて十四五本
⑧ 闇鍋は風が吹けば桶屋だからやめた
石川聡
⑨ セスナ機です第一希望は四葩(よひら)です
⑩ くちなしラテ色に梅雨は銀のスプーン
⑪ あめんぼうの波紋の微表情きえる
⑫ あなたの奥の画面が静止して合歓の花
田中耕司
⑬ 小さいクチナシが並んでる梅雨入り宣言
⑭ モッコウバラの黄色が消えたそこの夏
⑮ ピンクのクローバーの当たり年サツキミナヅキ
⑯ ヒルサキツキミソウが夏を引き寄せる
大川崇譜
⑰ 角の橋本さんの品のない花はタフなオレンジ
⑱ 負けたもう夏に負けた優先席
⑲ 後悔さみだれでお送りいたします
⑳ 水いらないというエアプランツの誤解のように
叶裕
㉑ どくだみに額(ぬか)こすりつけている
㉒ 土地痩せて梅雨の星
㉓ 口つけて飲む蛇口こそぼくを俳人たらしめる
㉔ 犬の舌かろうじて人のかたち
きゃさりん
㉕ 私のことベーグルと呼ぶから君はメロン
㉖ それは嘘似てるの誰に夢二の版画
㉗ 涼風を知らずに眠る車中泊
㉘ ジェラシーは恋のジレンマ消えぬ野火
若木はるか
㉙ はつなつの塔打ち立ててルピナス
㉚ 紫陽花まだ咲かぬか雨が足りぬか
㉛ ヤマボウシの白が緑刺す山みち
㉜ ダラダラが勢いづいて三日
草の耳彦
㉝ 黄色い彼ら椅子頬張る
㉞ 真実夢メモ頬も夜路の
㉟ やい!言えよ、赤さだな
㊱ 睡魔迫り昼過ぎ鳳仙花横切る
木野清瀬
㊲ 小さくても嘘が紫陽花
㊳ いぢわるこぢらせ八重のどくだみ
㊴ 空調の彼方に遠雷で会議室
㊵ バター溶かし何かになれそうな予感
ろこ
㊶ やり切ったと言って去っていく人に鼻をかむ
㊷ 水中とつけると息が苦しそう書店の名前なのに
㊸ パンツもスカートも私に反旗をひるがえした
㊹ 死体のように朽ちていく梅の実のお葬式
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