6月句会

平林吉明

① 乗り過ごした地下鉄にこぼれる

② おろおろ生きてそろそろ帰ります

③ 牝馬の瞳 涸れた井戸水

④ だまって毒はくおもいからだ


石原とつき

⑤ うぬぼれるうなじに音符描かせえ

⑥ 腐れば薔薇よ、大字ロールシャッハ

⑦ おおおかみに蛇口は付いて十四五本

⑧ 闇鍋は風が吹けば桶屋だからやめた


石川聡

⑨ セスナ機です第一希望は四葩(よひら)です

⑩ くちなしラテ色に梅雨は銀のスプーン

⑪ あめんぼうの波紋の微表情きえる

⑫ あなたの奥の画面が静止して合歓の花


田中耕司

⑬ 小さいクチナシが並んでる梅雨入り宣言

⑭ モッコウバラの黄色が消えたそこの夏

⑮ ピンクのクローバーの当たり年サツキミナヅキ

⑯ ヒルサキツキミソウが夏を引き寄せる


大川崇譜

⑰ 角の橋本さんの品のない花はタフなオレンジ

⑱ 負けたもう夏に負けた優先席

⑲ 後悔さみだれでお送りいたします

⑳ 水いらないというエアプランツの誤解のように


叶裕

㉑ どくだみに額(ぬか)こすりつけている

㉒ 土地痩せて梅雨の星

㉓ 口つけて飲む蛇口こそぼくを俳人たらしめる

㉔ 犬の舌かろうじて人のかたち


きゃさりん

㉕ 私のことベーグルと呼ぶから君はメロン

㉖ それは嘘似てるの誰に夢二の版画

㉗ 涼風を知らずに眠る車中泊

㉘ ジェラシーは恋のジレンマ消えぬ野火


若木はるか

㉙ はつなつの塔打ち立ててルピナス

㉚ 紫陽花まだ咲かぬか雨が足りぬか

㉛ ヤマボウシの白が緑刺す山みち

㉜ ダラダラが勢いづいて三日


草の耳彦

㉝ 黄色い彼ら椅子頬張る

㉞ 真実夢メモ頬も夜路の

㉟ やい!言えよ、赤さだな

㊱ 睡魔迫り昼過ぎ鳳仙花横切る


木野清瀬

㊲ 小さくても嘘が紫陽花

㊳ いぢわるこぢらせ八重のどくだみ

㊴ 空調の彼方に遠雷で会議室

㊵ バター溶かし何かになれそうな予感


ろこ

㊶ やり切ったと言って去っていく人に鼻をかむ

㊷ 水中とつけると息が苦しそう書店の名前なのに

㊸ パンツもスカートも私に反旗をひるがえした

㊹ 死体のように朽ちていく梅の実のお葬式




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